フォークリフトの安全運転コラム

vol.5|正しい知識を繰り返し学ぶ社内の安全教育

文 / 丸山 利明 物流技術研究会
大手運送会社に入社後、主に重量物取扱作業に従事する傍ら、社内作業指導員制度設立の一役を担う。
全日本トラックドライバーコンテスト準優勝。全国フォークリフト運転競技大会優勝。
平成15年、現タカラ物流システム(株)入社、平成22年に常務執行役員。
飲料系物流会社と物流技術研究会を設立し現場指導に努力。
陸上貨物運送事業労働災害防止協会(陸災防)専任講師、自動車事故対策機構(NASVA)専任講師などを務める。
現在、(株)TM安全企画を設立し活動中。

知識不足が事故を起こす

日頃仕事中に先輩や上司から教えてもらうこと(OJT)は大切な教育のひとつです。ただフォークリフトは誰でも見よう見まねでも乗れてしまう汎用機のため、勘と経験だけが伝承されてしまう危うさがあります。
資格証をとる際に基本的な知識は学びます。とは言え、現実的なフォークリフト作業では、現場ごとにロケーションや荷物が異なり、応用が必要になることもあります。応用には、基本を理解した正しい応用と、基本を無視して勘と経験だけに頼る誤った応用があります(図表1)。事故の多くは、この誤った応用の中で起こります。場合によっては応用せず、危険な作業そのものを止める決断が必要となることもあります。応用には基本を理解した正しい知識が不可欠なのです。

図表1事故を発生させる知識の違い

知識を身につける安全教育

従って事故を起こさないためには、正しい知識を身につける安全教育が必要となります。今までは果たして正しかったのか。もっと安全で楽な方法はないのか。安全教育は様々な疑問点を解決する場でもあり、仕事をするうえで必ず自身の強みにもなります。
フォークリフト作業は労働安全衛生法上「危険な業務」と定められており、基本操作は機械の構造や法令と密接な関係があるため、これらを正しく理解し応用しなければなりません。操作だけでなく機械の定期的な検査も忘れてはなりません。こうした基本的な知識は、インターネットで販売されているフォークリフトの安全支援教材などを活用しても良いでしょう。

辛抱強く一回を繰り返す

たとえ安全教育で正しい知識を学んだとしても、残念ながらすぐに活かされることはありません。長年培った習慣を変えるのは難しいことだからです。きっと翌日から、また元へ戻るでしょう。
しかし決して諦めないでください。初めから無理をせず「一回だけ」を試してみます。元来フォークリフト作業者は運転のプロですから、少しずつ自然に身体が覚えていきます。「一回できる」を繰り返すことが何より大切なのです。正しい知識は繰り返してこそ身につきます。基本を理解し日頃のOJTで正しい知識を活用できれば、事故予防とともに現場のスキルはさらに高まっていきます。

まずは気軽に実施してみよう

安全教育には個人単位・グループ単位・事業所単位など色々な規模があり、時間も千差万別です。ただ共通して言えることは、一方的に教える場ではなく、自ら学び課題を話し合う勉強会であるということ。聴かされている、やらされていると思うと眠たいだけの教育で終わってしまいます。共に教え合い学習し合うことが重要です。
普段フォークリフト作業者は単独で仕事をしているため、少ない時間であっても同じ職場の仲間が集まり、実技を交えてノウハウを教え合ったり話し合ったりすることはとても良いことだと思います。
管理者も可能な限り時間を作り、参加し一緒に学ぶ姿勢が大切です。現場を知る貴重なチャンスにもなります。現場の自主性を尊重し、開催しやすいよう積極的に支援してください。

身近なテーマを教材に

現場には物語があり、その中には「解答」もあります。現場に即したテーマや問題点を教材とすれば、カリキュラムも作りやすくなります。中でもKYT(危険予知訓練)は大切な項目です。基本を理解し危険を見極める感受性を養うことで、安全パトロールなどにも役立てることができます。
基本を理解した後は実技で実践してみましょう。実技では現場班長が指導するとより一層理解が深まります。さらに、事故のない人のノウハウを手本として共有するのも良いでしょう。フォークリフト用ドライブレコーダーの映像などを活用すれば、全員で何度も繰り返し学習することができます(図表2)。
また安全教育の中では、新たなテーマや現場改善のアイデアやヒントが出てくることがありますので、これもまた教育の収穫としてぜひ活用してください。

図表2ドライブレコーダーで共有も

ドライブレコーダーで共有も

継続して取り組める配慮を

安全教育は重要な会社業務です。社内に取り組みやすい配慮がなされていなくてはなりません。社外研修などでインストラクターを育成するのも配慮のひとつです。また教育は、開催すること、出席することが目的ではありません。教育や研修後には職場の業務に活かし改善へつなげることが何より大切です。
この安全教育を継続することで、もっと知りたい、もっと学びたいという風土が育っていきます。こうしたモチベーションは現場力を高め業績へも結びつきます。従って社内の安全教育は、企業評価と無関係ではいられない存在と言えるのです。

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