フォークリフトの安全|安全活動のすすめ方

vol.2|バック運転の車両が歩行者に激突

文 / 丸山 利明 物流技術研究会
大手運送会社に入社後、主に重量物取扱作業に従事する傍ら、社内作業指導員制度設立の一役を担う。
全日本トラックドライバーコンテスト準優勝。全国フォークリフト運転競技大会優勝。
平成15年、現タカラ物流システム(株)入社、平成22年に常務執行役員。
飲料系物流会社と物流技術研究会を設立し現場指導に努力。
陸上貨物運送事業労働災害防止協会(陸災防)専任講師、自動車事故対策機構(NASVA)専任講師などを務める。
現在、(株)TM安全企画を設立し活動中。

人と車両が錯綜する現場

フォークリフトが走り回っている場所で、作業員が歩いているのをよく目にします。ごく当たり前の光景に思えますが、これがかなり危ない。
フォークリフトと歩行者の接触(激突)は、フォークリフト災害の34%を占める多発するケースで、死に至ることもあります。
今回は、フォークリフトと歩行者が錯綜する「よくある現場」で発生した災害事例を見ながら、安全について考えていきたいと思います。

  • 図表1災害現場の状況

作業範囲に立ち入り激突

被災者Aさんは、夜間作業のピッキング業務に従事しており、その日17:00ごろ出勤のため駐車場にマイカーを停め、荷降ししている大型トラックの前を何気なく歩いていました(図表1)。
トラック前を通り過ぎた時、荷降しのためバック走行してきた、Bさんの運転するフォークリフトに後ろから激突され、倒れた瞬間にAさんの左足先はフォークリフトの後輪に轢かれてしまいました。Aさんは前頭部を打撲し、左足の指5本を骨折しました。

激突の問題点を探る

何が原因だったのか。「危険な行動」と「危険な状態」に分けて整理してみましょう。「危険な行動」で被災者Aさんやリフト作業者Bさんにある原因を探り、「危険な状態」では管理業務の問題点などを探っていきます。

〈危険な行動〉
―①後方確認せずにバック走行した
この現場のリフト作業者Bさんはバックで発進する前、後方確認をしていませんでした。
フォークリフトの荷役作業は、乗用車やトラックに比べ、バック運転(後進走行)する機会が圧倒的に多いのが特徴です。ですから、後ろを見ないことは「目を閉じて運転」しているのと同じくらい危険な行動と言えます。
―②歩行者が指定外の場所を歩いた
被災者Aさんは決められた歩行者通路を歩かず、トラックの前を横切りました。近道だったのかもしれません。
おそらく、その場所が危険だという認識はなく、誰も注意する者もおらず、日常の出勤行動だったと考えられます。
〈危険な状態〉
―①荷役作業エリアに人が入れる
日頃から、荷役作業が行われている現場へ誰でも自由に入れる状態になっていることは問題です。危険なだけでなく、荷役業務に集中できず能率が悪くなってしまう可能性もあります。
また、歩行者通路の分かりやすさも疑われます。白線の見やすさ、標識の有無なども再確認する必要があります。
―②安全意識・風土の欠如
この災害は、日常当たり前と考えられて来た中で起きています。安全通路を歩かない歩行者や、後方確認をしないリフト作業者を見ても、危険と気付かない(注意できない)風土があったと考えられます。
またこの職場では、安全意識などを共有する朝礼や夕礼も行われていませんでした。

災害を防ぐポイント

とかく対策は形骸化しがちです。対策は継続させなければ意味がありません。定期的にチェックできるよう安全衛生委員会など社内の仕組みに取り入れていくことが何より重要です。
また、現場の負担となり納得されない対策は続かないものです。できれば現場が対策を立て決めていくのが理想です。この事例では、次の対策が講じられました。

  • 図表2立入禁止対策の例
フォークリフトと人を明確に分ける

動いている車両のそばに人がいる状態は大変危険です。まずは稼働区域に人が立ち入れないよう分離することが大切です。
この現場では三角コーンとバーで囲い、物理的に歩行者立入禁止としました(図表2)。さらに、行われていなかった朝礼・夕礼の定時開催を徹底し、危険性の認識を共有するようにしました。
また、こうした改善や注意喚起を継続させるため、現場を良く知る職場班長へ安全管理の担当権限を与えるのも対策の一つとなります。

安全な運転方法を身につける

作業スペースや人員にも限界があり、どうしてもフォークリフトと人が接近してしまうことがあります。ですから、指差呼称など後方の目視確認は守るべき基本動作です。
しかしリフト作業者には自己流オレ流の方も多く、先輩から教えられたこともないという方もいます。この職場では、運転操作に関する実技教育を実施しました。

管理者が自分の目で現場を確かめる

この会社では、災害発生後に事故研究が行われています。現場では歩行者の安全意識に問題があるという声がありました。言い換えれば、荷役作業中リフト作業者は後方確認しないので歩行者は危険だと気付いていたわけです。また「行われているはず」と思っていたミーティングは開催されていませんでした。
このように、管理者と現場に知識や認識の隔たりがあると安全風土構築の障害となります。ひとたび災害となれば、管理者の責任であることは明白です。それゆえ管理者は報告だけに頼らず、自ら現場をよく見て、職場班長と歩調を合わせて危険に対する感受性を、人一倍醸成する必要があるのです。